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馬のよだれの原因と緊急度、経験者が教える5つの対処法

馬のよだれ(過剰唾液分泌)は、実は多くの馬主が「軽く見てしまう」症状の一つです。「暑さのせいかな」「草を食べ過ぎただけだろう」と放置して、後で深刻な病気に気づくケースが後を絶ちません。私は馬の管理アドバイザーとして長年現場を見てきましたが、この「よだれ」というサインは、単なる消化不良から命に関わる病気まで、実に様々な原因が潜んでいることを強く実感しています。この記事では、まず「これは緊急事態なのか?」という判断基準を明確にし、よくある原因(スロバーズ、歯のトラブル、中毒など)と、あなたが今日からできる具体的な対処法を、私の経験を交えながらわかりやすく解説します。例えば、「よだれの量が急に増えた」「食べ物を食べるのを嫌がる」「口元がゆがんでいる」といった症状が一つでもあれば、迷わず獣医師に連絡すべきです。逆に、「よだれは少量で、元気も食欲もある」という場合でも、「様子見」で済ませる前に、この記事のチェックリストを確認して、安全な飼育環境を再確認していただきたいと思います。「よだれ=大したことない」という思い込みを捨てて、愛馬の健康を守る第一歩を踏み出しましょう。

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馬のよだれ(過剰唾液分泌)って何?

よだれの役割と、馬の唾液腺の仕組み

馬のよだれ、つまり唾液は、口の中を潤し、食べ物を飲み込みやすくし、消化を助ける大切な液体です。水分と電解質、タンパク質でできています。馬には耳下腺、舌下腺、顎下腺という3対の唾液腺があり、1日に約10ガロン(約38リットル)もの唾液を分泌します。私たち人間の想像をはるかに超える量ですよね。

「過剰唾液分泌(よだれ)」は、この正常な唾液の量が増えすぎたり、馬がうまく飲み込めなくなったりすることで起こります。本来なら、馬は食べ物を食べるときに大量の唾液を出して、飲み込みます。しかし、何らかの理由でこのバランスが崩れると、口からだらだらとよだれが垂れてしまうのです。例えば、歯の問題で口の中が痛くて、うまく飲み込めない場合や、毒草を食べて唾液の分泌が異常に促進された場合など、その原因は実にさまざまです。私が現場で見てきた限りでも、「単に食べ過ぎた」という軽いものから、命に関わる重篤な病気まで、本当に様々なケースがあります。だからこそ、最初の対応がとても重要になります。

これは緊急事態?すぐに獣医さんを呼ぶべき?

過剰唾液分泌は、多くの場合、何か異常が起きているサインです。特に、よだれが突然大量に出始めた、元気がない、食べ物を食べようとしないといった症状が一緒に見られる場合は、迷わず獣医師に連絡してください。「ちょっとした食べ過ぎだろう」と軽く見てしまい、後で大きな病気に気づくケースは少なくありません。私の知り合いの馬主さんは、最初は「暑さのせいかな」と思っていたら、実は重篤な歯の感染症だったという経験をしています。よだれが垂れているからといって、すぐにパニックになる必要はありませんが、「様子を見よう」と放置するのは危険です。特に、『よだれ』と『発熱』『食欲不振』『よだれを垂らしている側の口元が垂れ下がっている』などの症状が組み合わさっている場合は、一刻も早く獣医師の診察を受けましょう。

馬のよだれの症状一覧

馬のよだれの原因と緊急度、経験者が教える5つの対処法 Photos provided by pixabay

あなたの馬にこんな症状は出ていませんか?

よだれの症状は、口からだらだらと唾液が垂れているというのが一番分かりやすいです。しかし、他にも注目すべきポイントがあります。例えば、飲み込もうと何度もゴクゴクしている、咳をしている、吐き気をもよおしているように見えるといった行動です。また、馬の鼻や口の周りが常に濡れている、あるいは地面に唾液の水たまりができているのも、典型的なサインです。

もう一つ、見逃しがちなのが、馬が食べ物を食べるのを嫌がるという行動です。口の中に痛みや違和感があると、食欲が落ちることがあります。例えば、大好きなニンジンを与えても、口に入れただけでポロッと落としてしまうようなら、口の中の異常を疑うべきでしょう。私の経験上、歯の粘膜が傷ついている馬は、特に硬い乾草を食べるのを嫌がります。また、食べ物を口の中でうまくまとめられず、ボロボロとこぼしながら食べるのも、よだれと一緒に見られることが多い症状です。これらは、「ただのよだれ」ではなく、「何かがおかしい」という合図として捉えてください。

症状の種類具体的な観察ポイント考えられる緊急性
よだれの量少量の泡状、または大量の水たまり大量の場合は緊急性が高い
食欲・飲水食べ物を口に入れても飲み込めない、または拒否する中程度~高い
行動の変化元気がない、落ち着かない、頭を振る高い(神経症状の可能性)
その他の症状発熱、咳、顔のゆがみ、首の腫れ非常に高い

馬のよだれの原因を徹底解説

最も多い原因「スロバーズ(スラフラミン中毒)」

馬のよだれの原因として最も一般的なのは、「スロバーズ」と呼ばれるものです。これは、土壌にいる「リゾクトニア・レグミニコラ」というカビが作る毒素(スラフラミン)が原因で起こります。この毒素を馬が食べると、唾液腺が異常に刺激されて大量のよだれが出るのです。なぜこの症状が「スロバーズ」と呼ばれるかというと、よだれがダラダラと垂れている様子が「よだれを垂らす人(スロバー)」のように見えるからです。面白い名前ですが、症状は深刻です。よだれだけでなく、下痢や頻尿、涙が止まらないといった症状も併発します。私の経験では、この原因の多くは、カビた干し草や飼料を食べたことがきっかけです。特に、雨に濡れたり、湿気の多い場所で保管された干し草は要注意です。放置すると命に関わることもあるので、早期発見と適切な対応が不可欠です。

でも、「スロバーズ」だけが原因ではありません。実は、馬のよだれの原因は多岐にわたります。例えば、「歯のトラブル」も非常に多い原因の一つです。馬の歯は生涯伸び続けるため、噛み合わせが悪くなると、歯の内側や外側に鋭いエナメル質のとがり(エナメルポイント)ができます。これが舌や頬の内側を傷つけ、痛みと炎症を引き起こして、よだれの原因になります。私が定期的に歯科検診を勧めるのは、このためです。また、牧草に混ざった異物(金属片、枝など)が口の中に刺さるケースも珍しくありません。馬は胃が小さく、一度に大量の草を食べるように進化してきたため、よく噛まずに飲み込む癖があります。そのため、異物を口に入れてしまうリスクが高いのです。

命に関わる危険な病気「狂犬病」「水疱性口内炎」

次に、これは絶対に見逃してはいけないという原因を紹介します。それが、「狂犬病」「水疱性口内炎」です。これらは人にも感染する可能性がある人獣共通感染症で、非常に危険です。特に狂犬病は、一度発症すればほぼ100%死亡する恐ろしい病気です。よだれの他に、抑うつ状態、衰弱、疝痛(腹痛)などの症状を示すことが多いです。ただし、狂犬病は馬における発生は非常に稀です。しかし、「稀だから大丈夫」と考えるのは危険です。私の地域では、野生動物(キツネやアライグマなど)が狂犬病を媒介するケースが報告されています。もし馬がよだれを垂らしていて、普段と違う異常な行動(壁に頭を押し付ける、攻撃的になるなど)を見せたら、絶対に近づかず、すぐに獣医師と保健所に連絡してください。水疱性口内炎は、ハエによって媒介されるウイルス性の病気です。口の中や蹄の上に水疱(水ぶくれ)ができ、それが破れて痛みを生じるため、よだれが止まらなくなります。こちらも人に感染するので、手袋やマスクなど、適切な防護をして対応する必要があります。馬のよだれを見たら、「これはただのよだれかもしれない」と楽観視する前に、まずは「危険な病気の可能性」を頭の片隅に置いておくことが、飼い主としての責任だと思います。

馬のよだれの原因と緊急度、経験者が教える5つの対処法 Photos provided by pixabay

あなたの馬にこんな症状は出ていませんか?

その他にも、中毒や物理的なケガも原因になります。例えば、牧草に生えている「キンポウゲ」や「マリーゴールド」などの植物には、唾液の分泌を促す化学物質が含まれています。また、新しくペンキを塗った柵や木材保護剤を舐めてしまい、化学物質中毒を起こすこともあります。さらに、「ゴボウ」「ハマビシ」「エノコログサ」といった植物の棘や種が、物理的に口の中を傷つけるケースも。私の知り合いの牧場では、馬がバラの枝を食べて口の中を傷つけ、大量のよだれを垂らしたことがありました。また、頭部への強い衝撃(キックや転倒など)による顔面神経の損傷も、よだれの原因になります。この場合、けがをした側の唇が垂れ下がり、その側からのみよだれが出るという特徴があります。他にも、「ストラングル(馬伝染性貧血)」「チョーク(食道閉塞)」「唾液腺の病気(唾石症やガン)」など、様々な原因が考えられます。つまり、「よだれ」という一つの症状から、実に多くの可能性を考えなければならないということです。だからこそ、「自分で何とかしよう」とせず、必ず獣医師の診断を仰ぐことが大切なのです。

獣医師はどのように診断するのか?

診断の第一歩:問診と身体検査

獣医師が最初に行うのは、あなたからの詳しい話を聞くこと(問診)です。具体的には、「いつからよだれが出始めたのか」「他にどんな症状があるのか」「最近、新しい干し草や飼料を与えたか」「馬の周りに変わったものはないか」など、非常に細かい質問をします。私が獣医師に相談する時も、馬の行動や環境の変化をできるだけ詳細に伝えるようにしています。例えば、「3日前から、新しい牧草地で放牧を始めました」「昨日、雨に濡れた干し草を食べさせました」といった情報が、診断の大きな手がかりになります。次に、身体検査を行います。体温、心拍数、呼吸数、そして腸の蠕動音(グルグルという音)を聴診器で確認します。発熱があれば感染症、腸音が弱ければ疝痛の可能性が考えられます。この基本的な検査で、ある程度の原因の見当をつけることができるのです。

精密検査:口の中の検査から内視鏡検査まで

身体検査の後は、より詳しい検査に移ります。まず、口の中を直接見る「口腔内検査」です。獣医師は保定(馬を安全に押さえること)をした上で、口を開け、舌や歯茎、歯の状態を確認します。この時、必ず手袋を着用するのは、狂犬病や水疱性口内炎などの人獣共通感染症を防ぐためです。口の中に傷や潰瘍、異物、歯の異常がないか、舌の筋肉のトーン(張り)や嚥下反射(飲み込む力)も評価します。次に、「食道閉塞(チョーク)」を疑う場合は、鼻から胃までチューブを挿入する「経鼻胃管挿入」を行います。これで、チューブが食道の途中で詰まってしまうかどうかが分かります。さらに、「内視鏡検査」も有効です。内視鏡を鼻から挿入し、喉の奥(咽頭)や喉嚢(こうのう:馬特有の器官)、食道の内部を直接観察します。これにより、喉嚢内の感染症や腫瘍、食道の粘膜の状態を詳しく調べることができます。最後に、血液検査を行い、炎症や感染の有無を調べます。特定のウイルス感染が疑われる場合は、専門の検査機関に血液を送って確定診断を行います。これらの検査結果を総合的に判断して、初めて正確な原因が特定されるのです。

馬のよだれの治療法

馬のよだれの原因と緊急度、経験者が教える5つの対処法 Photos provided by pixabay

あなたの馬にこんな症状は出ていませんか?

治療法は、原因によって全く異なります。例えば、「スロバーズ(スラフラミン中毒)」が原因なら、毒素を含む干し草や飼料をすぐに取り除き、馬を安静にさせます。多くの場合、原因となる飼料を除去すれば、1~2週間で自然に回復します。しかし、「チョーク(食道閉塞)」の場合は、獣医師が鎮静剤を投与して、食道を洗浄(ラベージ)するという処置が必要です。また、「歯のトラブル」なら、浮かし(歯のとがりを削る処置)や、割れた歯の抜歯が必要になります。私の経験では、歯のトラブルが原因でよだれが出ていた馬は、浮かし処置をしたその日のうちに食欲が戻り、よだれもピタリと止まりました。このように、治療法は原因によって「全くの対症療法」だったり、「根本的な原因を取り除く治療」だったりするのです。だからこそ、「とにかくよだれを止める薬をください」とは言わずに、まずは獣医師に原因を特定してもらうことが最優先です。

一般的な治療と併用される補助療法

原因に応じた治療に加えて、症状を和らげるための補助療法も行われます。例えば、感染症が疑われる場合は抗生物質、炎症や痛みを抑えるために非ステロイド性抗炎症薬(フェニルブタゾンやフルニキシンメグルミンなど)が使用されます。また、口の中の感染を抑えるために、クロルヘキシジンという消毒薬での洗口も効果的です。私が特に重要だと思うのは、「カリウムの補給」です。唾液には大量のカリウムが含まれているため、よだれが続くと体内のカリウムが不足し、代謝異常を起こす可能性があります。そのため、獣医師の指示に従って、電解質サプリメントやカリウムを多く含む飼料を与えることがあります。ただし、これらの補助療法はあくまで「補助」であり、根本的な原因を取り除くことが治療の本質です。例えば、狂犬病には有効な治療法はなく、残念ながら致死率は100%です。だからこそ、予防接種をしっかりと受けておくことの重要性を、私は強く訴えたいです。「よだれが出たら、とりあえずこの薬を飲ませておけば大丈夫」という考えは絶対にやめましょう。獣医師の診断と治療計画に従うことが、馬の回復への一番の近道です。

回復と管理:よだれが治った後のケア

回復期間中の過ごし方と食事の注意点

ほとんどのよだれの原因は、適切な治療を受ければ、完全に回復します。回復期間は原因によって異なりますが、多くの場合、2週間以内に症状が改善します。この間は、馬を決して運動させないでください。乗馬はもちろん、パドックでの軽い運動も控えましょう。また、口にハミ(馬具)を入れるのも絶対に避けてください。口の中の痛みや違和感を悪化させる可能性があります。食事については、柔らかくて食べやすいものを与えることが大切です。私のおすすめは、完全栄養のペレット飼料(Tribute Senior Horse Foodなど)をお湯でふやかして作った「スラリー(どろどろの餌)」です。これなら、歯が痛くても、口の中に傷があっても、無理なく食べることができます。また、チョーク(食道閉塞)を繰り返す馬や、歯の状態が悪い馬は、生涯にわたってこうした柔らかい飼料を主食にする必要があるかもしれません。回復期には、馬が食べたがらないからといって、無理に食べさせるのは逆効果です。食欲が戻るまで、少量ずつ、様子を見ながら与えるようにしましょう。

再発を防ぐための予防策と環境管理

よだれの再発を防ぐには、日常的な予防策が何よりも重要です。まず、年に1回は必ず歯科検診を受けましょう。私は、春と秋の年2回、専門の馬の歯科医に診てもらうことをおすすめしています。歯のトラブルは、よだれの原因として非常に多いからです。次に、馬の放牧地や馬房の環境を定期的にチェックしてください。地面に金属片、針金、枝、プラスチック片などの異物が落ちていないか、有毒植物(キンポウゲ、ドクウツギ、イチイなど)が生えていないかを確認します。私の牧場では、毎週決まった曜日に、スタッフ全員で牧草地のパトロールをしています。また、干し草や飼料の保管状態にも注意しましょう。湿気の多い場所に保管すると、カビが生えてスロバーズの原因になります。乾燥した、風通しの良い場所で保管することが大切です。さらに、新しい干し草や飼料を与える時は、必ず少量から始めて、馬の様子を観察するという習慣をつけましょう。もし、これらの予防策を怠ると、再発を繰り返すだけでなく、より深刻な代謝障害を引き起こす可能性があります。「予防は治療に勝る」という言葉を、私は馬の管理においても強く信じています。

予防のための日常管理チェックリスト

今日からできる!簡単チェックリスト

では、具体的に何をすればいいのか、今日からすぐに実践できるチェックリストを作りました。これを毎日、または週に1回のペースで確認するだけで、よだれの原因となる多くのリスクを減らせます。まず、「馬の口元を毎日チェックする」こと。よだれが垂れていないか、口の周りが濡れていないか、食べ物を食べるときに違和感がなさそうかを、10秒でいいので観察してください。次に、「干し草や飼料の匂いを嗅ぐ」こと。カビ臭い、酸っぱい、異臭がする場合は、すぐに食べさせるのをやめましょう。そして、「牧草地のパトロール」です。週に1回、牧草地の中を歩いて、異物や有毒植物がないか確認します。特に、雨が降った後や、強風が吹いた後は念入りにチェックしましょう。これらのチェックは、「後でやろう」と思っていると、つい忘れてしまうものです。だからこそ、「朝の餌やりの後」「週末の午前中」など、具体的な時間を決めて習慣化することをおすすめします。

プロが教える!さらに効果的な予防策

基本的なチェックに加えて、さらに効果的な予防策をいくつか紹介します。まず、「定期的な歯科検診」は絶対に欠かせません。先ほども言いましたが、年に1回は必ず専門の馬の歯科医に診てもらい、歯の浮かし処置(エナメルポイントの削り取り)を受けましょう。これは、よだれの予防だけでなく、馬の全体的な健康維持にもつながります。次に、「飼料の品質管理」です。干し草は、直射日光が当たらず、風通しの良い倉庫で保管し、雨に濡れないようにカバーをかけることが大切です。また、「新しい飼料は、必ず少量から試す」というルールを徹底しましょう。そして、「ワクチン接種」も忘れずに。狂犬病や破傷風など、よだれの原因となる病気の予防接種を定期的に受けることで、リスクを大幅に減らせます。私の牧場では、すべての馬に年に1回の狂犬病ワクチンを接種しています。最後に、「緊急時の連絡先リストを作る」ことです。かかりつけの獣医師の電話番号はもちろん、夜間や休日でも対応してくれる動物病院の番号を、馬房の目立つ場所に貼っておきましょう。いざという時に、「電話番号が分からない」というパニックに陥らないためにも、この準備は非常に重要です。

馬のよだれに関するよくある誤解と真実

誤解1:「よだれは暑さのせい。心配いらない」

これは、私が最もよく耳にする誤解の一つです。確かに、暑い日に馬が口を開けてよだれを垂らしている姿を見ると、単に暑さで喉が渇いているように見えるかもしれません。しかし、健康な馬が暑さだけであそこまで大量のよだれを垂らすことは、ほとんどありません。実際には、口の中の痛みや、何かしらの病気が原因でよだれが出ているケースがほとんどです。例えば、暑さでバテて、草を食べるのが面倒になり、歯の手入れを怠った結果、歯のとがりが口腔内を傷つけてよだれが出るというのは、よくあるパターンです。ですから、夏場によだれを見つけたら、まずは「暑さが原因かもしれない」と考える前に、「何か問題が起きているかもしれない」と疑ってください。もし、他の症状(食欲不振、元気がないなど)がなく、よだれも少量で、馬が元気に動き回っているなら、様子を見ても大丈夫かもしれません。しかし、「もしも」のことを考えて、獣医師に電話で相談するのが一番安全です。私の同僚は、「どうせ暑さだろう」と放置して、後で重篤な歯の感染症が見つかったという苦い経験をしています。

誤解2:「よだれが出たら、すぐに口を水で洗い流すべき」

これも、間違った対応の一つです。確かに、口の中に異物が入っている場合、水で洗い流せば楽になるように思えます。しかし、原因が狂犬病や水疱性口内炎などの感染症だった場合、水で洗い流すという行為が、ウイルスや細菌を周囲にまき散らすことになり、非常に危険です。また、原因が「チョーク(食道閉塞)」だった場合、水を無理に飲ませることで、気管に水が入って誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあります。私が獣医師から強く言われているのは、「原因が分からないうちは、何もしてはいけない」ということです。よだれが出ている馬を見つけたら、まずは馬を落ち着かせ、安全な場所に移動させて、動かさないようにしてください。そして、すぐに獣医師に連絡し、指示を仰ぐことが正しい対応です。自分で何とかしようとせず、プロに任せるのが、馬のためになるということを覚えておいてください。

もう一つ、知っておくべきリスクと注意点

よだれが続くと、どんなリスクがあるの?

ここで、「よだれが続くこと自体のリスク」についても、きちんとお話ししておきたいと思います。よだれが続くと、大量の水分と電解質(特にカリウム)が体外に失われます。これは、「脱水症状」と「電解質異常」を引き起こし、馬の全身状態を悪化させる可能性があります。具体的には、元気がなくなる、食欲が落ちる、心拍数が乱れる、筋肉が痙攣するといった症状が現れることがあります。さらに、大量の唾液が常に口から垂れていることで、口の周りの皮膚が炎症を起こす「皮膚炎」も引き起こします。これは、皮膚がただれて、細菌感染を起こす原因にもなります。私の知り合いの馬は、スロバーズで数日間よだれが続いた後、口の周りがひどく荒れて、治療に時間がかかったことがあります。ですから、「よだれくらい大したことない」と軽く見てはいけません。よだれが続くということは、それだけ体に負担がかかっているというサインです。早期発見・早期治療が、これらの二次的なリスクを防ぐことにつながります。

もし、よだれが止まらなかったら?どうすればいい?

仮に、獣医師の治療を受けて、原因が特定され、治療法が決まったとしても、よだれがなかなか止まらない場合があります。例えば、中毒の場合は、毒素が体内から完全に排出されるまでに時間がかかることがあります。また、歯のトラブルの場合、処置後に痛みが完全に引くまでに数日かかることもあります。そんな時、焦って「もう一度別の治療をしてほしい」と獣医師に詰め寄るのは、あまり良い対応ではありません。大切なのは、獣医師としっかりとコミュニケーションを取り、経過観察のポイントを確認することです。例えば、「どのくらいの期間、よだれが続くのが正常なのか」「どのような症状が出たら、再受診すべきなのか」といったことを、具体的に聞いておきましょう。私の経験上、獣医師が「1週間で治るはず」と言ったのに、10日経っても改善しない場合は、必ず再受診するべきです。また、「よだれが止まっても、食欲が戻らない」という場合も、注意が必要です。根本的な問題が解決していない可能性があります。最終的には、「馬の様子をよく観察すること」と「獣医師との信頼関係を築くこと」が、何よりも大切だと私は思います。

馬のよだれ(過剰唾液分泌)って何?

よだれの役割と、馬の唾液腺の仕組み

馬のよだれ、つまり唾液は、口の中を潤し、食べ物を飲み込みやすくし、消化を助ける大切な液体です。水分と電解質、タンパク質でできています。馬には耳下腺、舌下腺、顎下腺という3対の唾液腺があり、1日に約10ガロン(約38リットル)もの唾液を分泌します。私たち人間の想像をはるかに超える量ですよね。

「過剰唾液分泌(よだれ)」は、この正常な唾液の量が増えすぎたり、馬がうまく飲み込めなくなったりすることで起こります。本来なら、馬は食べ物を食べるときに大量の唾液を出して、飲み込みます。しかし、何らかの理由でこのバランスが崩れると、口からだらだらとよだれが垂れてしまうのです。例えば、歯の問題で口の中が痛くて、うまく飲み込めない場合や、毒草を食べて唾液の分泌が異常に促進された場合など、その原因は実にさまざまです。私が現場で見てきた限りでも、「単に食べ過ぎた」という軽いものから、命に関わる重篤な病気まで、本当に様々なケースがあります。だからこそ、最初の対応がとても重要になります。

これは緊急事態?すぐに獣医さんを呼ぶべき?

過剰唾液分泌は、多くの場合、何か異常が起きているサインです。特に、よだれが突然大量に出始めた、元気がない、食べ物を食べようとしないといった症状が一緒に見られる場合は、迷わず獣医師に連絡してください。「ちょっとした食べ過ぎだろう」と軽く見てしまい、後で大きな病気に気づくケースは少なくありません。私の知り合いの馬主さんは、最初は「暑さのせいかな」と思っていたら、実は重篤な歯の感染症だったという経験をしています。よだれが垂れているからといって、すぐにパニックになる必要はありませんが、「様子を見よう」と放置するのは危険です。特に、『よだれ』と『発熱』『食欲不振』『よだれを垂らしている側の口元が垂れ下がっている』などの症状が組み合わさっている場合は、一刻も早く獣医師の診察を受けましょう。

馬のよだれの症状一覧

馬のよだれの原因と緊急度、経験者が教える5つの対処法 Photos provided by pixabay

あなたの馬にこんな症状は出ていませんか?

よだれの症状は、口からだらだらと唾液が垂れているというのが一番分かりやすいです。しかし、他にも注目すべきポイントがあります。例えば、飲み込もうと何度もゴクゴクしている、咳をしている、吐き気をもよおしているように見えるといった行動です。また、馬の鼻や口の周りが常に濡れている、あるいは地面に唾液の水たまりができているのも、典型的なサインです。

もう一つ、見逃しがちなのが、馬が食べ物を食べるのを嫌がるという行動です。口の中に痛みや違和感があると、食欲が落ちることがあります。例えば、大好きなニンジンを与えても、口に入れただけでポロッと落としてしまうようなら、口の中の異常を疑うべきでしょう。私の経験上、歯の粘膜が傷ついている馬は、特に硬い乾草を食べるのを嫌がります。また、食べ物を口の中でうまくまとめられず、ボロボロとこぼしながら食べるのも、よだれと一緒に見られることが多い症状です。これらは、「ただのよだれ」ではなく、「何かがおかしい」という合図として捉えてください。

症状の種類具体的な観察ポイント考えられる緊急性
よだれの量少量の泡状、または大量の水たまり大量の場合は緊急性が高い
食欲・飲水食べ物を口に入れても飲み込めない、または拒否する中程度~高い
行動の変化元気がない、落ち着かない、頭を振る高い(神経症状の可能性)
その他の症状発熱、咳、顔のゆがみ、首の腫れ非常に高い

馬のよだれの原因を徹底解説

最も多い原因「スロバーズ(スラフラミン中毒)」

馬のよだれの原因として最も一般的なのは、「スロバーズ」と呼ばれるものです。これは、土壌にいる「リゾクトニア・レグミニコラ」というカビが作る毒素(スラフラミン)が原因で起こります。この毒素を馬が食べると、唾液腺が異常に刺激されて大量のよだれが出るのです。なぜこの症状が「スロバーズ」と呼ばれるかというと、よだれがダラダラと垂れている様子が「よだれを垂らす人(スロバー)」のように見えるからです。面白い名前ですが、症状は深刻です。よだれだけでなく、下痢や頻尿、涙が止まらないといった症状も併発します。私の経験では、この原因の多くは、カビた干し草や飼料を食べたことがきっかけです。特に、雨に濡れたり、湿気の多い場所で保管された干し草は要注意です。放置すると命に関わることもあるので、早期発見と適切な対応が不可欠です。

でも、「スロバーズ」だけが原因ではありません。実は、馬のよだれの原因は多岐にわたります。例えば、「歯のトラブル」も非常に多い原因の一つです。馬の歯は生涯伸び続けるため、噛み合わせが悪くなると、歯の内側や外側に鋭いエナメル質のとがり(エナメルポイント)ができます。これが舌や頬の内側を傷つけ、痛みと炎症を引き起こして、よだれの原因になります。私が定期的に歯科検診を勧めるのは、このためです。また、牧草に混ざった異物(金属片、枝など)が口の中に刺さるケースも珍しくありません。馬は胃が小さく、一度に大量の草を食べるように進化してきたため、よく噛まずに飲み込む癖があります。そのため、異物を口に入れてしまうリスクが高いのです。

命に関わる危険な病気「狂犬病」「水疱性口内炎」

次に、これは絶対に見逃してはいけないという原因を紹介します。それが、「狂犬病」「水疱性口内炎」です。これらは人にも感染する可能性がある人獣共通感染症で、非常に危険です。特に狂犬病は、一度発症すればほぼ100%死亡する恐ろしい病気です。よだれの他に、抑うつ状態、衰弱、疝痛(腹痛)などの症状を示すことが多いです。ただし、狂犬病は馬における発生は非常に稀です。しかし、「稀だから大丈夫」と考えるのは危険です。私の地域では、野生動物(キツネやアライグマなど)が狂犬病を媒介するケースが報告されています。もし馬がよだれを垂らしていて、普段と違う異常な行動(壁に頭を押し付ける、攻撃的になるなど)を見せたら、絶対に近づかず、すぐに獣医師と保健所に連絡してください。水疱性口内炎は、ハエによって媒介されるウイルス性の病気です。口の中や蹄の上に水疱(水ぶくれ)ができ、それが破れて痛みを生じるため、よだれが止まらなくなります。こちらも人に感染するので、手袋やマスクなど、適切な防護をして対応する必要があります。馬のよだれを見たら、「これはただのよだれかもしれない」と楽観視する前に、まずは「危険な病気の可能性」を頭の片隅に置いておくことが、飼い主としての責任だと思います。

馬のよだれの原因と緊急度、経験者が教える5つの対処法 Photos provided by pixabay

あなたの馬にこんな症状は出ていませんか?

その他にも、中毒や物理的なケガも原因になります。例えば、牧草に生えている「キンポウゲ」や「マリーゴールド」などの植物には、唾液の分泌を促す化学物質が含まれています。また、新しくペンキを塗った柵や木材保護剤を舐めてしまい、化学物質中毒を起こすこともあります。さらに、「ゴボウ」「ハマビシ」「エノコログサ」といった植物の棘や種が、物理的に口の中を傷つけるケースも。私の知り合いの牧場では、馬がバラの枝を食べて口の中を傷つけ、大量のよだれを垂らしたことがありました。また、頭部への強い衝撃(キックや転倒など)による顔面神経の損傷も、よだれの原因になります。この場合、けがをした側の唇が垂れ下がり、その側からのみよだれが出るという特徴があります。他にも、「ストラングル(馬伝染性貧血)」「チョーク(食道閉塞)」「唾液腺の病気(唾石症やガン)」など、様々な原因が考えられます。つまり、「よだれ」という一つの症状から、実に多くの可能性を考えなければならないということです。だからこそ、「自分で何とかしよう」とせず、必ず獣医師の診断を仰ぐことが大切なのです。

獣医師はどのように診断するのか?

診断の第一歩:問診と身体検査

獣医師が最初に行うのは、あなたからの詳しい話を聞くこと(問診)です。具体的には、「いつからよだれが出始めたのか」「他にどんな症状があるのか」「最近、新しい干し草や飼料を与えたか」「馬の周りに変わったものはないか」など、非常に細かい質問をします。私が獣医師に相談する時も、馬の行動や環境の変化をできるだけ詳細に伝えるようにしています。例えば、「3日前から、新しい牧草地で放牧を始めました」「昨日、雨に濡れた干し草を食べさせました」といった情報が、診断の大きな手がかりになります。次に、身体検査を行います。体温、心拍数、呼吸数、そして腸の蠕動音(グルグルという音)を聴診器で確認します。発熱があれば感染症、腸音が弱ければ疝痛の可能性が考えられます。この基本的な検査で、ある程度の原因の見当をつけることができるのです。

精密検査:口の中の検査から内視鏡検査まで

身体検査の後は、より詳しい検査に移ります。まず、口の中を直接見る「口腔内検査」です。獣医師は保定(馬を安全に押さえること)をした上で、口を開け、舌や歯茎、歯の状態を確認します。この時、必ず手袋を着用するのは、狂犬病や水疱性口内炎などの人獣共通感染症を防ぐためです。口の中に傷や潰瘍、異物、歯の異常がないか、舌の筋肉のトーン(張り)や嚥下反射(飲み込む力)も評価します。次に、「食道閉塞(チョーク)」を疑う場合は、鼻から胃までチューブを挿入する「経鼻胃管挿入」を行います。これで、チューブが食道の途中で詰まってしまうかどうかが分かります。さらに、「内視鏡検査」も有効です。内視鏡を鼻から挿入し、喉の奥(咽頭)や喉嚢(こうのう:馬特有の器官)、食道の内部を直接観察します。これにより、喉嚢内の感染症や腫瘍、食道の粘膜の状態を詳しく調べることができます。最後に、血液検査を行い、炎症や感染の有無を調べます。特定のウイルス感染が疑われる場合は、専門の検査機関に血液を送って確定診断を行います。これらの検査結果を総合的に判断して、初めて正確な原因が特定されるのです。

馬のよだれの治療法

馬のよだれの原因と緊急度、経験者が教える5つの対処法 Photos provided by pixabay

あなたの馬にこんな症状は出ていませんか?

治療法は、原因によって全く異なります。例えば、「スロバーズ(スラフラミン中毒)」が原因なら、毒素を含む干し草や飼料をすぐに取り除き、馬を安静にさせます。多くの場合、原因となる飼料を除去すれば、1~2週間で自然に回復します。しかし、「チョーク(食道閉塞)」の場合は、獣医師が鎮静剤を投与して、食道を洗浄(ラベージ)するという処置が必要です。また、「歯のトラブル」なら、浮かし(歯のとがりを削る処置)や、割れた歯の抜歯が必要になります。私の経験では、歯のトラブルが原因でよだれが出ていた馬は、浮かし処置をしたその日のうちに食欲が戻り、よだれもピタリと止まりました。このように、治療法は原因によって「全くの対症療法」だったり、「根本的な原因を取り除く治療」だったりするのです。だからこそ、「とにかくよだれを止める薬をください」とは言わずに、まずは獣医師に原因を特定してもらうことが最優先です。

一般的な治療と併用される補助療法

原因に応じた治療に加えて、症状を和らげるための補助療法も行われます。例えば、感染症が疑われる場合は抗生物質、炎症や痛みを抑えるために非ステロイド性抗炎症薬(フェニルブタゾンやフルニキシンメグルミンなど)が使用されます。また、口の中の感染を抑えるために、クロルヘキシジンという消毒薬での洗口も効果的です。私が特に重要だと思うのは、「カリウムの補給」です。唾液には大量のカリウムが含まれているため、よだれが続くと体内のカリウムが不足し、代謝異常を起こす可能性があります。そのため、獣医師の指示に従って、電解質サプリメントやカリウムを多く含む飼料を与えることがあります。ただし、これらの補助療法はあくまで「補助」であり、根本的な原因を取り除くことが治療の本質です。例えば、狂犬病には有効な治療法はなく、残念ながら致死率は100%です。だからこそ、予防接種をしっかりと受けておくことの重要性を、私は強く訴えたいです。「よだれが出たら、とりあえずこの薬を飲ませておけば大丈夫」という考えは絶対にやめましょう。獣医師の診断と治療計画に従うことが、馬の回復への一番の近道です。

回復と管理:よだれが治った後のケア

回復期間中の過ごし方と食事の注意点

ほとんどのよだれの原因は、適切な治療を受ければ、完全に回復します。回復期間は原因によって異なりますが、多くの場合、2週間以内に症状が改善します。この間は、馬を決して運動させないでください。乗馬はもちろん、パドックでの軽い運動も控えましょう。また、口にハミ(馬具)を入れるのも絶対に避けてください。口の中の痛みや違和感を悪化させる可能性があります。食事については、柔らかくて食べやすいものを与えることが大切です。私のおすすめは、完全栄養のペレット飼料(Tribute Senior Horse Foodなど)をお湯でふやかして作った「スラリー(どろどろの餌)」です。これなら、歯が痛くても、口の中に傷があっても、無理なく食べることができます。また、チョーク(食道閉塞)を繰り返す馬や、歯の状態が悪い馬は、生涯にわたってこうした柔らかい飼料を主食にする必要があるかもしれません。回復期には、馬が食べたがらないからといって、無理に食べさせるのは逆効果です。食欲が戻るまで、少量ずつ、様子を見ながら与えるようにしましょう。

再発を防ぐための予防策と環境管理

よだれの再発を防ぐには、日常的な予防策が何よりも重要です。まず、年に1回は必ず歯科検診を受けましょう。私は、春と秋の年2回、専門の馬の歯科医に診てもらうことをおすすめしています。歯のトラブルは、よだれの原因として非常に多いからです。次に、馬の放牧地や馬房の環境を定期的にチェックしてください。地面に金属片、針金、枝、プラスチック片などの異物が落ちていないか、有毒植物(キンポウゲ、ドクウツギ、イチイなど)が生えていないかを確認します。私の牧場では、毎週決まった曜日に、スタッフ全員で牧草地のパトロールをしています。また、干し草や飼料の保管状態にも注意しましょう。湿気の多い場所に保管すると、カビが生えてスロバーズの原因になります。乾燥した、風通しの良い場所で保管することが大切です。さらに、新しい干し草や飼料を与える時は、必ず少量から始めて、馬の様子を観察するという習慣をつけましょう。もし、これらの予防策を怠ると、再発を繰り返すだけでなく、より深刻な代謝障害を引き起こす可能性があります。「予防は治療に勝る」という言葉を、私は馬の管理においても強く信じています。

予防のための日常管理チェックリスト

今日からできる!簡単チェックリスト

では、具体的に何をすればいいのか、今日からすぐに実践できるチェックリストを作りました。これを毎日、または週に1回のペースで確認するだけで、よだれの原因となる多くのリスクを減らせます。まず、「馬の口元を毎日チェックする」こと。よだれが垂れていないか、口の周りが濡れていないか、食べ物を食べるときに違和感がなさそうかを、10秒でいいので観察してください。次に、「干し草や飼料の匂いを嗅ぐ」こと。カビ臭い、酸っぱい、異臭がする場合は、すぐに食べさせるのをやめましょう。そして、「牧草地のパトロール」です。週に1回、牧草地の中を歩いて、異物や有毒植物がないか確認します。特に、雨が降った後や、強風が吹いた後は念入りにチェックしましょう。これらのチェックは、「後でやろう」と思っていると、つい忘れてしまうものです。だからこそ、「朝の餌やりの後」「週末の午前中」など、具体的な時間を決めて習慣化することをおすすめします。

プロが教える!さらに効果的な予防策

基本的なチェックに加えて、さらに効果的な予防策をいくつか紹介します。まず、「定期的な歯科検診」は絶対に欠かせません。先ほども言いましたが、年に1回は必ず専門の馬の歯科医に診てもらい、歯の浮かし処置(エナメルポイントの削り取り)を受けましょう。これは、よだれの予防だけでなく、馬の全体的な健康維持にもつながります。次に、「飼料の品質管理」です。干し草は、直射日光が当たらず、風通しの良い倉庫で保管し、雨に濡れないようにカバーをかけることが大切です。また、「新しい飼料は、必ず少量から試す」というルールを徹底しましょう。そして、「ワクチン接種」も忘れずに。狂犬病や破傷風など、よだれの原因となる病気の予防接種を定期的に受けることで、リスクを大幅に減らせます。私の牧場では、すべての馬に年に1回の狂犬病ワクチンを接種しています。最後に、「緊急時の連絡先リストを作る」ことです。かかりつけの獣医師の電話番号はもちろん、夜間や休日でも対応してくれる動物病院の番号を、馬房の目立つ場所に貼っておきましょう。いざという時に、「電話番号が分からない」というパニックに陥らないためにも、この準備は非常に重要です。

馬のよだれに関するよくある誤解と真実

誤解1:「よだれは暑さのせい。心配いらない」

これは、私が最もよく耳にする誤解の一つです。確かに、暑い日に馬が口を開けてよだれを垂らしている姿を見ると、単に暑さで喉が渇いているように見えるかもしれません。しかし、健康な馬が暑さだけであそこまで大量のよだれを垂らすことは、ほとんどありません。実際には、口の中の痛みや、何かしらの病気が原因でよだれが出ているケースがほとんどです。例えば、暑さでバテて、草を食べるのが面倒になり、歯の手入れを怠った結果、歯のとがりが口腔内を傷つけてよだれが出るというのは、よくあるパターンです。ですから、夏場によだれを見つけたら、まずは「暑さが原因かもしれない」と考える前に、「何か問題が起きているかもしれない」と疑ってください。もし、他の症状(食欲不振、元気がないなど)がなく、よだれも少量で、馬が元気に動き回っているなら、様子を見ても大丈夫かもしれません。しかし、「もしも」のことを考えて、獣医師に電話で相談するのが一番安全です。私の同僚は、「どうせ暑さだろう」と放置して、後で重篤な歯の感染症が見つかったという苦い経験をしています。

誤解2:「よだれが出たら、すぐに口を水で洗い流すべき」

これも、間違った対応の一つです。確かに、口の中に異物が入っている場合、水で洗い流せば楽になるように思えます。しかし、原因が狂犬病や水疱性口内炎などの感染症だった場合、水で洗い流すという行為が、ウイルスや細菌を周囲にまき散らすことになり、非常に危険です。また、原因が「チョーク(食道閉塞)」だった場合、水を無理に飲ませることで、気管に水が入って誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあります。私が獣医師から強く言われているのは、「原因が分からないうちは、何もしてはいけない」ということです。よだれが出ている馬を見つけたら、まずは馬を落ち着かせ、安全な場所に移動させて、動かさないようにしてください。そして、すぐに獣医師に連絡し、指示を仰ぐことが正しい対応です。自分で何とかしようとせず、プロに任せるのが、馬のためになるということを覚えておいてください。

もう一つ、知っておくべきリスクと注意点

よだれが続くと、どんなリスクがあるの?

ここで、「よだれが続くこと自体のリスク」についても、きちんとお話ししておきたいと思います。よだれが続くと、大量の水分と電解質(特にカリウム)が体外に失われます。これは、「脱水症状」と「電解質異常」を引き起こし、馬の全身状態を悪化させる可能性があります。具体的には、元気がなくなる、食欲が落ちる、心拍数が乱れる、筋肉が痙攣するといった症状が現れることがあります。さらに、大量の唾液が常に口から垂れていることで、口の周りの皮膚が炎症を起こす「皮膚炎」も引き起こします。これは、皮膚がただれて、細菌感染を起こす原因にもなります。私の知り合いの馬は、スロバーズで数日間よだれが続いた後、口の周りがひどく荒れて、治療に時間がかかったことがあります。ですから、「よだれくらい大したことない」と軽く見てはいけません。よだれが続くということは、それだけ体に負担がかかっているというサインです。早期発見・早期治療が、これらの二次的なリスクを防ぐことにつながります。

もし、よだれが止まらなかったら?どうすればいい?

仮に、獣医師の治療を受けて、原因が特定され、治療法が決まったとしても、よだれがなかなか止まらない場合があります。例えば、中毒の場合は、毒素が体内から完全に排出されるまでに時間がかかることがあります。また、歯のトラブルの場合、処置後に痛みが完全に引くまでに数日かかることもあります。そんな時、焦って「もう一度別の治療をしてほしい」と獣医師に詰め寄るのは、あまり良い対応ではありません。大切なのは、獣医師としっかりとコミュニケーションを取り、経過観察のポイントを確認することです。例えば、「どのくらいの期間、よだれが続くのが正常なのか」「どのような症状が出たら、再受診すべきなのか」といったことを、具体的に聞いておきましょう。私の経験上、獣医師が「1週間で治るはず」と言ったのに、10日経っても改善しない場合は、必ず再受診するべきです。また、「よだれが止まっても、食欲が戻らない」という場合も、注意が必要です。根本的な問題が解決していない可能性があります。最終的には、「馬の様子をよく観察すること」と「獣医師との信頼関係を築くこと」が、何よりも大切だと私は思います。

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FAQs

Q: 馬のよだれの原因で一番多いのは何ですか?

A: 馬のよだれの原因で最も多いのは、「スロバーズ」と呼ばれるスラフラミン中毒です。これは、土壌にいるカビ「リゾクトニア・レグミニコラ」が生成する毒素を、馬がカビた干し草や飼料と一緒に摂取することで起こります。私の経験上、このケースは特に雨に濡れたり、湿気の多い場所で保管された干し草でよく見られます。よだれ以外にも、下痢や頻尿、涙が止まらないといった症状が現れるのが特徴です。ただし、スロバーズだけが原因ではありません。歯のトラブル、例えば馬の歯のエナメル質のとがり(エナメルポイント)が舌や頬を傷つけるケースも非常に多いです。また、牧草に混ざった異物(金属片や枝)が口の中に刺さることもあります。ですから、よだれを見つけたら、まずは「スロバーズかもしれない」と考えるのは良いですが、同時に他の可能性も頭に入れておく必要があります。何より、正確な原因を特定するために、獣医師の診断を仰ぐことが最も大切です。

Q: よだれが出ている時、すぐに獣医師に連絡すべきですか?

A: はい、基本的にはすぐに獣医師に連絡することをおすすめします。よだれは、単なる軽い問題ではなく、狂犬病や水疱性口内炎のような命に関わる病気のサインである可能性もあるからです。特に、よだれが突然大量に出始めた、元気がない、食べ物を食べようとしない、発熱がある、といった症状が一緒に見られる場合は、緊急事態と考えてください。私の知り合いの馬主さんは、「暑さのせいだろう」と軽く見ていたら、実は重篤な歯の感染症だったという経験をしています。獣医師に連絡する際は、「いつからよだれが出始めたか」「他にどんな症状があるか」「最近、新しい飼料や干し草を与えたか」「馬の周りに変わったものはないか」といった情報を整理して伝えると、診断がスムーズになります。自分で口を水で洗い流すなどの処置は、原因によっては危険を伴うので、絶対にしないでください。まずは馬を安全な場所に落ち着かせ、獣医師の指示を待つことが最善の対応です。

Q: 治療法は原因によってどれくらい変わりますか?

A: 治療法は、原因によって全く異なります。例えば、最も多いスロバーズ(スラフラミン中毒)の場合は、原因となるカビた干し草や飼料をすぐに取り除き、馬を安静にさせることが基本です。多くの場合、原因となる飼料を除去すれば、1~2週間で自然に回復します。一方、チョーク(食道閉塞)が原因なら、獣医師が鎮静剤を投与した上で、食道を洗浄(ラベージ)する処置が必要です。また、歯のトラブル(エナメルポイントや破損した歯)が原因なら、歯の浮かし処置や抜歯が行われます。私の経験では、歯のトラブルの馬は、処置をしたその日のうちに食欲が戻り、よだれもピタリと止まりました。さらに、感染症が原因の場合は抗生物質、炎症や痛みを抑えるために非ステロイド性抗炎症薬(フェニルブタゾンなど)が使われることもあります。このように、「よだれを止める薬」という万能なものはなく、まずは原因を特定し、それに合わせた治療を行うことが絶対条件です。だからこそ、自己判断で市販薬などを与えるのは絶対に避けてください。

Q: よだれが治った後のケアで、特に気をつけることはありますか?

A: 回復期のケアで最も重要なのは、馬をしっかりと休ませ、消化に優しい食事を与えることです。よだれの原因が何であれ、回復期間中は運動を控え、口にハミ(馬具)を入れるのも避けてください。口の中の痛みや炎症を悪化させる可能性があります。食事については、完全栄養のペレット飼料をお湯でふやかして作った「スラリー(どろどろの餌)」がおすすめです。歯が痛くても、口の中に傷があっても、無理なく食べられます。私の牧場では、回復期の馬には必ずこのスラリーを与えています。また、馬が食べたがらないからといって、無理に食べさせるのは逆効果です。食欲が戻るまで、少量ずつ、様子を見ながら与えましょう。さらに、再発を防ぐために、年に1回の歯科検診と、放牧地や馬房の環境チェックを習慣にすることが大切です。特に、干し草や飼料の保管状態には注意し、カビの発生を防ぐために、乾燥した風通しの良い場所で保管してください。これらの予防策を習慣化することが、馬の健康を守る一番の近道です。

Q: 日常生活で、よだれを予防するためにできることはありますか?

A: はい、日常生活でできる予防策はたくさんあります。まず、毎日10秒でいいので、馬の口元をチェックする習慣をつけましょう。よだれが垂れていないか、口の周りが濡れていないか、食べ物を食べるときに違和感がなさそうかを観察します。次に、干し草や飼料の匂いを嗅ぐことです。カビ臭い、酸っぱい、異臭がする場合は、すぐに食べさせるのをやめてください。そして、週に1回は牧草地のパトロールを行い、異物(金属片、針金、枝)や有毒植物(キンポウゲ、ドクウツギなど)が生えていないか確認します。私の牧場では、毎週決まった曜日にスタッフ全員で牧草地を歩くようにしています。さらに、年に1回の歯科検診と、狂犬病や破傷風などの予防接種も忘れずに受けてください。これらの予防策は、「後でやろう」と思っていると、つい忘れてしまうものです。だからこそ、「朝の餌やりの後」「週末の午前中」など、具体的な時間を決めて習慣化することをおすすめします。これだけで、よだれの原因となる多くのリスクを減らせます。

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